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わたしは、この日のために【鬼滅の刃】

第6章 最終選別前夜


杏寿郎様がこんなにも思ってくださっている。
ううん、勘違いしてはいけない。
これは師匠としての感情。
大切に育てきた我が子を送り出すような心情なのだろう。

「(このように、離れがたい。ずっとそばで笑っていて欲しい。そして、あわよくば触れたいと言う気持ちには名前があるということを宇髄は言っていたが、教えてはくれなかった。己で気づけということ。愛に対するこの気持ち、わからないが、嫌ではない。)」

今までは漫画の上での好きで、まるでアイドルに恋するような感じだった。
杏寿郎様の人となりに触れて、目の前の男の人として好きになった。
あれだけ大事にされて、惚れない方がおかしい。
このまま伝えなくてもいい?
わたしが叶えたいこと、成し遂げたいことはただ一つだけど、根本は

杏寿郎様と一緒にいたい

ということ。
わがままだなぁ。
初めは死なせたくないという思いだけだったのに。
杏寿郎様に振り向いて欲しい。
杏寿郎様に好きになって欲しい。
なんて思う。
欲張りだなぁ。
うん、よし、最終選別、生き残れば告白しよう。
当たって砕けろ!

『杏寿郎様。最終選別に合格して、帰ってきたらお話ししたいことがあります。』
「…わかった。」
短く二人で約束を交わす。

「愛、一つ聞きたいことがある。」
『なんでしよう?』
杏寿郎が神妙な顔をしてそう聞くので、愛の体が硬くなる。

「俺が誘ったのだが…なぜ愛は鬼殺隊に入ろうと思ったのだ?なぜ、厳しい鍛錬を続けている?」
杏寿郎はずっと疑問だった。
愛がどういうつもりで炎柱の継子として、鍛錬を重ねているのか。
鬼への憎しみが強いものが多い中、愛はそうではなさそうだ。

『大切な人を守るためですよ。わたしに救える命があるなら、救いたいのです。』
少し遠い目をして、愛はフワリと笑う。
強い思いのこもった優しい笑みだった。

「…そうか。変なことを聞いたな。(愛に大切な人。それは一体…)」

『では、お疲れだと思いますので、ゆっくりお休みください。』
「…あぁ、おやすみ」

二人は別れ、夜は更けていった。
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