第4章 継子として
まだ、体がふわふわしている。
漫画やアニメ上でもわかってはいたが、やはりあの話し方はダメだ。
何かこう、無条件で従ってしまうというか、とても穏やかな気持ちになるお声だった。
実際にあの声を聞いて、圧倒されてしまった。
正直、もう何を話したか、わたしがどういう顔をしていたのかわからない。
「がんばりなさい。」
そうフワッと言われ、思わず
『頑張ります!』
と地に頭を擦り付けていた。
ところで、わたしはまだ鬼殺隊の一員ですらなく、最終選別を合格しないといけないらしい。
そりゃそうだ。
最終選別に合格し、隊員になれば、正式に継子として認めれるそうだ。
今はまだ継子見習い、というわけか。
それでも杏寿郎様は継子だ!と言ってくれる。
その思いに早く応えたい。
先程の信じているという言葉はとても嬉しかった。
『杏寿郎様、わたしこれから頑張ります!』
いつも以上に気合の入っている愛に杏寿郎は優しく微笑みかける。
「うむ!良い心がけだ!」
『ようし!帰ったらしっかり稽古しますね!』
「愛、今日は俺はこれから集まりがあり、そのまま任務に赴く。」
杏寿郎が振り返り、愛に言った。
『あ…そうなのですね。お忙しい中、今日もありがとうございます。』
愛は少し寂しそうに、しかしそれを隠すように笑った。
杏寿郎様を困らせてはいけない。
お忙しい方だもの。
「ここからは懇意にしている隠に案内をお願いしてある。その者と合流して、用事を済ませたら、家まで送ってもらうと良い。」
『あ!はい!お気遣いありがとうございます。』
「うむ、隠の名は岸本という。その者に金は預けてある。愛は生活に必要なものを揃えるとよい。」