第4章 継子として
『お、おろしてください!杏寿郎様!』
「よもや、よもやだ!こんなにも愛の足が遅かったなんて。より一層稽古をつけよう。」
片腕でひょいと持ち上げられた愛とはっはっと笑いながら歩く杏寿郎。
バカにした雰囲気もなく、純粋にそう言っているようだ。
愛は一般的な女性と比べれば、足も早く、体力もある方に含まれるが、男性ましてや柱から見れば到底叶わない。
しかも、以前の継子はあの甘露寺蜜璃だ。
比べているわけではないが、杏寿郎にとっての普通のレベルが高いということだ。
『さっきはちょっとよろけただけです!自分で歩けます〜!』
ジタバタと杏寿郎の腕の中で暴れ出す。
「盛大にこけたではないか!膝から血が出ている。」
『恥ずかしいから言わないでください!もう血は止まりました!』
はたから見ると何とも楽しそうな会話である。
しかし、先ほどからたまにすれ違う人にえ?という顔で見られるので愛にとってはたまったものではない。
「おー!煉獄。派手に女抱えてるなぁ!」
うわ、もう口振りで誰かわかるよぉ。
ほんと泣きたい。
「宇髄か。ちょうど良い。昨日から継子になった愛だ。」
『佐藤愛です。昨日からお世話になっております。
よろしくお願い申し上げます。』
やっとのことで、おろしてもらった愛はピシッと挨拶をする。
「おーおー、煉獄の継子だったのか。…あまり考えずにひょいと継子にするのも考えものだぞ。」
「む!愛には才能がある!俺はそれを信じる!」
愛はかぁぁっと顔が熱くなるのがわかる。
「そうかい。じゃた、またな」
宇髄はひらひらと手を振り、この場を後にする。
『杏寿郎様のご期待に沿えるよう頑張ります!』
「うむ!いい心がけだ!」
「さぁ、親方様へ報告だ!」