第12章 大切なもの
は1人煉獄家へと帰っていた。
:「ん?…気のせいか…」
が後ろから誰かついてきているような気がして不安に思い少し足を早めたその時だった。
:「きゃっ!!」
足元をすくわれた次の瞬間には森の中へと連れて行かれていた。
:「…誰なの…離して…」
がそう言うと、バサッと森の中で落とされた。
月明かりに照らされたその顔は
:「鬼っ…」
3メートルはゆうに超える巨体の鬼が立っていた。
鬼:「離してやることはできるが、逃がすことはできねぇぞ。あの方がお前を連れてこいと言ってるからな。それにしてもお前稀に見る器量の良さだな…美味そうだ…少しくらいなら味見してもいいだろう。グルル…」
:「…それ以上近づけば、切るわよ」
は小刀を出した。
鬼:「そんな物で俺を切れると思ってるのか?それにお前鬼殺隊士じゃないだろ、例えそれが日輪刀だったとしてもその大きさと、お前の力じゃどうにもならない。俺たちは無敵だ。お前達が必死になって治す傷も、俺たちにとっちゃかすり傷なんだよ。」
:「かわいそうに。」
鬼:「なに?可哀想なのはお前たちだ。どんなに抗っても俺たちには勝てない。傷もすぐには治らない。治ったとしても結局お前らを待つのは死だ。」
:「違う。いつか失ってしまうからこそ、お互いを大切にする気持ちが生まれる。すぐに傷が治らないからこそ、怪我をしてほしくないと、相手を守ろうとする気持ちが生まれるのよ。その気持ちをあなたたちは知らない。お互いを想う気持ちを知らないあなたたちはすごく哀れだわ。」
鬼:「ふん、よく分からんな、まぁ、分かりたくもないがな。話はそれで終わりか?」
:「…私もあなたともう話したくもないわ。」
鬼:「なら、味見の時間だな。グルル…」
鬼はのことを片手で掴み上げ、匂いを嗅いだ。
鬼:「スンッ、稀血とまでは行かないが、美味そうな甘いいい匂いだ。」
ガブッ
:「…っ!うっ、あぁぁぁぁ!」
の右腕が食いちぎられた。
杏:「炎の呼吸、弍の型、昇り炎天!」
不:「風の呼吸、壱の型、塵旋風・削ぎ」