第9章 父親
父:「…もうすでに立派な医者だ。お前は。すぐに私のことなんて超えられる。私のことを死ぬほど憎かっただろうに、憎しみに飲まれることなく、たくさんの人を救ってきた。それは誰にでもできるようなことじゃない。」
:「でも、憎かったからこそ、そうなりたくないって思ってやってきたんだよ、不純な動機だよ…」
父:「そこがお前と、飲まれてしまう者の違いだ。己が弱く、飲まれてしまう人間は、同じことをして返そうとする。だがは、それを人を救う力へと変えられた。それだけでお前が立派だとする理由は十分だ。、お前は私の誇りだ。を娘に持てて、そんな自慢の娘に見送られるんだ。なんと幸せなことか。」
:「父さん…」
父:「いいか、、これから先大切なものを奪われることもたくさんあるだろう、それが人か、病か、はたまた別のものか、それはわからない。だが決して、憎しみに飲まれるな。人生は、大事に生きても短い、そんな尊いものを、憎しみなんかに、これからは一瞬たりとも奪われるな。そして人の尊きものを守れるよう、1人でも多くの命を救え。これが私の遺言だ。できるな?」
:「…分かった、分かったよ…」
が返事をするとの父親は今までに見たことがないほど穏やかな顔で息を引き取った。
前とは違い静かに泣くの肩を支えるのは杏寿郎だった。
千寿郎もまた泣いている怜の背中をさすっていた。
他の3人もただ苦し気な表情で立っていることしかできなかった。