第9章 父親
杏:「いちいちの許嫁と言ってくるのは気に食わない!だが、君もいつも穏やかで、冷静で、真摯に人と向き合える者に見える。が男だったら遊のような男だっただろうな。」
杏寿郎が言う通り、千寿郎の印象通り、遊は見た目も男前で背も高く、中身も冷静で優しい、それでいて親しみやすさもある、誰が見ても非の打ち所がない好青年だった。
遊:「そうか…。確かにいつもはそうかもしれないが、のことになるとそうはいられなくなるんだ。俺も。」
杏:「俺"も"…?」
遊:「あぁ、杏寿郎、あのとき俺の家で会話の一部を聞いてただろ。気配でわかってたぞちゃんと。だが、おそらく話の途中で気配が消えたから、俺らが恋仲だとでも思ってどっかに行った。違うか?」
杏:「よもや…バレていたとは…。」
遊:「俺もが好きだ。こんな小さな時からずっと。だから、俺も杏寿郎には負けないからな。許嫁とは言え、の気持ちが俺の方に向いてくれなきゃ意味がないからな。全力で振り向かせる。」
杏:「やはり君は、誠実な男だな。だからと言って、譲る気は無いがな!」
2人はしばし男同士の会話を楽しみ、翌日遊は町へと帰って行った。
それから1週間くらい経った頃だろうか。
と怜はいつものように蝶屋敷に行っていた。
帰りはたまたま蝶屋敷にいた冨岡に送ってもらい、2人が帰ると杏寿郎、千寿郎、遊の3人が神妙な面持ちをして居間に座っていた。
怜:「ただいま〜。あ、遊さんこんにちは!」
遊:「こんにちは、お勤めご苦労様」
:「ただ今帰りました。あら遊きてたのね。…?どうしたの3人ともそんな深刻そうな顔して」
遊:「、親父さんが倒れた。」
:「…え?今なんて…?」
遊:「違う人の往診に行っての家の前を通ったとき、いつも取られていてないはずの新聞が、もう昼時だってのに玄関前に置いたままだったんだ。変だなと思って声をかけても返事がなくて、家に上がって見たら…