第7章 鬼舞辻無惨
男:「それは、お前の力量不足だからじゃねぇのか?心の傷をお前が治してやれてねぇからまだ怖がるんじゃねぇか。」
杏:「…なに?」
胡:「お言葉ですが…」
宇:「女にそんな扱いしといて…」
柱達も流石に怒っていた。だがはみんなに続きを言わせなかった。
:「たしかに、その通り。自分の力不足を何度責めたことか。怜の心の傷をすぐに私に治せる力があったなら、と何度悩んだことか。でも、貴様が怜を捨てなければ、あんたがちゃんとした親だったら、怜が心身共に傷つくことはなかった。治せない原因は私にあるが、傷ついた原因はあんたにある。責任転嫁をするな。…足を出して。」
杏寿郎はが落ち着いたのを察し、肩を掴む手を離した。
男はぶるぶると体を震わせ、固まっている。
:「手当てしなくていいの。」
男は渋々足を出した。
:「勘違いしないで。あんたを許したわけでも、助けたいわけでもない。怪我人を手当てするのが私の仕事だから、私情を挟んで責任を果たせなかったら怜に合わせる顔がないから、手当てするだけ。骨折だけだから固定だけだけど。」
男:「…っれ」
:「喋るな。余計なことを喋れば私はあんたを殺しかねない。私は医者。急所も心得ている。この状態で即座に命を奪うことだって容易い。」
全員が黙ってそれを見ていた。
そして男の足の固定が終わった。
:「終わりよ。すぐここを去って。そして二度と私と怜の前に姿を現さないで。」
男を睨みつけながら言った。
胡:「でも、このままの状態では歩くこともままなりませんよ?」
:「なら這いつくばって行けばいい。怜の10年はどうあがいても取り戻せない。遠くへ行って真っ当に生きて。それがあなたができる唯一の償いよ。」
男:「そんな、歩け…」
:「私がお前を殺す前にさっさと消え失せぬか!」
男:「ひぃっ!」
男は足を引きずりながら逃げていった。