第4章 煉獄邸
杏:「少女か!眠れなかったのだろう!隣に座るといい!」
杏寿郎は自分の隣をぽんぽんとたたいた。
:「分かってたんですね…。ありがとうございます。」
杏:「俺は柱だからな!少女も一杯どうだ?」
:「怜に何かあった時困るので、今日はお気持ちだけ頂戴しておきます。ありがとうございます。」
杏:「そうか!やはり、あぁ言っていたものの、怜少女のことを考えているのだな。」
:「私も反省しているんです。怜に責任を取れなんて言ったけど、私があそこで無理やりにでも連れて行っていれば、間違った判断をさせることはなかった。怜に人を殺したと思わせてしまった、私に見捨てられるかもしれないという恐怖を感じさせてしまった。あの子の泣き顔は見たくないのに…。」
それはが初めて他人に吐いた弱音だった。
杏:「君たちは本当の姉妹のようだな。俺は医療のことはよく分からないが、怜少女をあの場に残した少女の判断は間違っていなかったと思う。少女が言っていた命の優先順位について、身をもって知ることができただろう。彼女ならそれを次に活かせるはずだ。」
:「煉獄さん…。そうですね、怜ならきっと今日のことで学んだはずですよね。私、怜のこと信じてあげられなかった…、怜の先生失格だな…。」
悲しそうに微笑みながら言った。
杏:「杏寿郎」
:「え?」
杏:「俺の名は杏寿郎だ。煉獄ではなく、杏寿郎と呼んでくれ。それに、少女は怜少女のことを信じられなかったのではない。大切に思うからこそ、傷つけてしまったと感じたんだ。」
杏寿郎は、自分より後に出会った千寿郎のことは名前で呼ぶのに対し、自分のことはいつまでも煉獄と呼ぶことを少し気にしていた。
:「そう…ですね…。今の言葉にすごく救われました。ありがとうございます、杏寿郎さん。」
そう言うの表情から既に憂いは消えていた。
杏寿郎は珍しく顔を逸らしながら、あぁ!と言った。今が夜でよかった、でなければ顔が己の毛先のように赤くなっているのがバレてしまっただろう。