第4章 煉獄邸
老婦人の容態を見たは
:「耳から血が出てる、頭を強く打ったんだ。」
そう言って触診すると、
:「あっ、ここだ…。よし、これなら手術はいける。大丈夫。」
は脳に詰まった血栓を取り除き、縫合して、腕や足、首の骨など損傷した他の部分の手当てをした。
怒りと悲しみで泣き叫んでいた女性は感情を失い、でくのぼうのようになっていた。そんな女性を見て、怜を含めた全員ががほんとは冷たいのではと感じてしまったのだ。
怜もずっとついて回っていたが、こんなにひどい状況は怜は見たことがなかった。それ故にその時のがどのようになるのかも見たことがなかったのだ。
怜は男性を諦めきれず、切り開かれた腹から手を突っ込み、心臓マッサージをした。そうすると男性は一時的に呼吸を回復させた。が、次の瞬間
ブシュッ
と音がして男性は血を吐き、切り開いた部分から血がどろっと流れ出た。
その瞬間男性は息を引き取った。
怜:「私、私…」
しばらく経ってその場で最初に口を開いたのは伊黒だった。
伊:「甘露寺にそいつらの様子を見てきてほしいと頼まれてきてみれば、こんな有様で、残されたものに対し冷たい言葉を言い放っていった。やはりあいつらは腕利きの医者などではなかったのだ。」
不:「悪いが俺もそれは伊黒に同感だなァ。このことはお館様に報告しなきゃならねェ。」
冨:「…」
怜:「ちがうっ!私はそうだけど、先生は腕利きの医者だ!あの言い方だってきっと、きっと、何か先生には理由があってあんな言い方を…先生はそんな冷たい人じゃっ!はっ…!」
怜は自分が男性に囲まれていると気づくとまた肩が震え出した。
千:「怜…。」
杏:「怜少女の言う通りだ!きっと少女は何か理由があってあのような言い方をしたのだろう!来るまでもう少し…」
女:「うぁぁぁぁぁぁ!」
でくのぼうだったような女性がいきなり怜に殴りかかってきた。
怜は咄嗟に頭を抱えてしゃがんだ。
女:「どんな理由よ!まだ息があったのに!あいつは彼を見捨てた!あんたは彼を殺した!医者のくせに!命を見捨てた!天秤にかけた!殺した!どんな理由があろうと命を見捨てていいわけない!殺していいわけない!医者なら尚更よ!」
そう言って怜の背中を叩いた。