第16章 見つけた
杏:「き、君は…!」
:「…?通りすがりの医者です。」
はにっこりと笑うと足早にその場を去った。
杏:(間違いない…あれは、俺が死ぬほど愛した女性ではないか…)
それから杏寿郎は全く授業に集中できないまま、帰りの伊黒夫妻の店での飲み会を迎えた。
宇:「おい、煉獄全然酒が進んでねぇじゃねぇか。どうした?」
不:「今日一日中ずーっとぼーっとしっぱなしだったしよォ。」
冨:「…」
不:「冨岡ァ、テメェは何が楽しくて飲みに来やがる…。」
杏:「見つけたんだ。」
宇:「見つけた?」
不:「何か無くし物でもしてたのかァ?」
杏:「を、見つけた。」
宇:「なに!?どこでだ!」
不:「なんだとォ?なにをしてたァ?」
杏:「電車のホームへ向かう途中の道でぶつかった。医者をしていると話していた。」
不:「…間違いなさそうだなァ。」
宇:「そっからどうしたんだよ?」
杏:「…そのまま行ってしまった。」
不:「あァ?」
宇:「連絡先も聞かなかったのか!?」
杏:「うむ。向こうが急いでたのでな。聞きそびれた。」
冨:「…バカだな…」
不:「オメェはもうずっと黙ってろォ」
宇:「お前のこと覚えてる素振りはなかったのか?」
杏:「誰だろうという顔をしていた。」
不:「向こうは何も覚えてねぇってことかよォ。」
宇:「ならまた偶然会うことを願ってるしかねぇな。」
無惨討伐に関わった者たちのほとんどは前世の記憶が残っていた。
一方杏寿郎と再会してからのはというと