第14章 幸福
怜と杏寿郎は暗い顔をしたままの部屋へと向かった。
:「2人とも来てくれたの?ありがとう」
杏:「…」
怜:「…」
:「あぁ、2人とも聞いたのね。私の体のこと。」
杏:「…なぜ黙っていた。なぜ痛みを感じた時にすぐ言わなかった。」
杏寿郎は怒っていた。別にに怒っていたわけではない。の変化に気づかなかった自分の不甲斐なさに苛立ちを感じていたのだ。だが結果的に、に八つ当たりするような形になってしまった。
:「あの時はすぐ治ると思っていたんです。すぐ治る痛みも、そうでない痛みも区別がつかないなんて、だめですよね、ごめんなさい。」
杏:「…医療の知識がない俺は、そんなに頼りないか?痛みを訴えたところでどうにもならないと思っていたから、言わなかったのか?」
:「そんなことありませんよ。杏寿郎さんは誰よりも頼りになる方じゃないですか。」
杏:「…君は、嘘はつきたくないと言っていたから、嘘はつかないものだと思っていた…。…すまない…今日はもう行こう。ゆっくり休むといい。」
杏寿郎は部屋を出て行った。
:「杏寿郎さんのこと、怒らせちゃったな…」
怜:「先生…先生がいなくなったら私、どうしたらいいんですか…?先生しか面倒見てくれる人いないのに…死んじゃうなんて…いやです…。」
:「そんなことないわ、怜は1人じゃない、千寿郎くんも遊もしのぶさんも、みんな怜のこと面倒見てくれるわよ。」
怜:「先生じゃなきゃ嫌です!ずっと先生を目標にして生きてきたのに…。そうだ!私の臓器を先生に移植して、そしたら!」
:「怜、お願い、そんなこと言わないで。私が生きるために怜が犠牲になるなんて、耐えられない。そんなの死ぬよりつらいわ。」
怜:「でも、でも…なんで…」