第77章 75.
「おう、ちゃんと起きたか?」
『うん……ちゃんと66号は、食事を摂ることが出来るんだね…』
朝パンとかおにぎりって言ったけど、食パンをトースターで焼いて、ハムかベーコンかをフライパンで蒸している最中だった。フタをしていて匂いがするから、割と慣れているのかも知れない。
香るコーヒーの匂いの元はコーヒーマシンからだろうか。
「飯くらい用意は出来るぜ。もうちょっと待っててくれよ」
『じゃあ、洗濯物でも干していようかな、昨晩ベッドで使ったタオルは洗濯出来なかったから籠に入れとくよ』
「おう、サンキューな、ああそうだ、」
明日の洗濯で洗おうと、片手に持ったまま数歩進んだ所で耳にした言葉に、私は足を止めてしまった。
「それが終わったら一緒に朝食しようぜ、追加でケーキも買ってきてやったぞ」
『えっ本当!?』
浴室方向へと進む。ケーキも嬉しいけれど、この生活の始まりが嬉しかった。
サイタマ達の所で普通を知って良かった。もう、サイタマとジェノスは第二の親というか、教育者なんじゃないかってくらいに生活に必要な事を教えてくれた。
おかげさまで凄く幸せだ。るんるんとタイマーで洗い終えた洗濯物を籠に移し入れ、ベランダの方へ持っていき、シワを伸ばしながら干していく。
昨日、久しぶりに会話した時に、サイタマはA市の協会の敷地内に住んでると言っていた。本部にマンションを作って、市民を守りながら住んでもらおうとの事で、そこに住むヒーローの家賃はタダだったから…と言ってたな。
サイタマらしいっちゃあらしいよね。
S級となると、怪人協会や、昨日の件くらいで大きく順位が上がる事はなく、依然として変わらぬまま。なかなかゾンビマン抜かせないなぁ、と思いながらゾンビマンのパンツを干した。
洗濯を干し終わり、リビングに戻ると新聞を読んで待っていたゾンビマンが私に気がつく。
私が座って揃って朝食を摂り始める。今まで一緒に食事をしに行く事は多かったけれど、なんだか新鮮だな…と思いながら、パンに齧りついた。