第1章 壱
『お待たせしました。』
杏「大丈夫だ!では行こうか。」
杏「着いたぞ、ここが俺の家で今日から君の家にもなる。」
立派な家に息を呑んだ、すごいなぁ、私が住んでいた所とは全く違う。
杏寿郎の後に続いて敷地に踏み入る。
玄関の戸を開ければそこには杏寿郎と同じ髪色をした少年が立っていた。
千「兄上!おかえりなさい…そちらの方は?」
笑顔で振り向いた少年は師範そっくりだった、違うところといえば八の字に下がった眉と少しばかり気弱にみえるくらい。
杏「今日から俺の継子になった彩羽紅音だ。」
『これからお世話になります、紅音です。よろしくお願いします。』
頭を下げて自己紹介をすれば弟さんは笑顔で挨拶をしてくれた。
千「紅音さん、俺は煉獄千寿郎といいます。よろしくお願いします。」
私より四つ程離れた歳の子だと言う杏寿郎。
礼儀正しい姿は見習わなければいけない。
千「お部屋へご案内しますね。」
千寿郎にそう言われ履物を整え着いていく。
広々とした家に師範と千寿郎くんは2人で住んでいるのだろうか?
辺りを見回しながら歩いているとひとつの部屋の襖に目が止まった。
僅かに開いた襖から師範や千寿郎くんと同じ髪が見えた。
『…?』
立ち止まり少しの間その様子を眺めてしまう。
僅かな隙間なだけに全ては見えないが横たわっているように見える。身体が悪いのか…?
(父さん、今兄さんが薬を持ってきてくれるよ…だから大丈夫だよ…。お水持ってくるね…!)
『っ?!』
頭に痛みが走る。
ボロボロな布団に横たわる痩せた男に語りかけているのは…私?
父さん…?兄さん…?一体なんのこと…。
思い出そうとすればする程頭が痛む。
ズキズキと、思い出すなと言うかのように。