第9章 祈り
突然目の前に飛び込んできた人影に、危なく尻もちをつきそうになったなまえだったが。何とか持ち堪えた彼女は、正面に現れた五条の姿を見て、ブッと思わず吹き出した。
「あははっなにそれっ、サンタさん?」
「悟サンタでーすっ!ミンナニユメトキボウヲハコビニキタヨ」
「言い慣れない言葉を使うから片言になってるけど」
サンタの服と帽子を被って登場した五条に、笑い転げるなまえと冷静な突っ込みを入れる硝子。サングラスをかけたサンタは、お世辞にもサンタには見えないが、本人はのりのりだ。よく見れば、右手にはホールケーキが乗っている。
ケーキに気付いて、テンションを上げるなまえをどうどうと鎮めて、ケーキとすき焼きがテーブルの上に置かれる。
その視覚的な破壊力の強さに、思わずなまえは口を手で覆った。
「クリスマスにすき焼きっ…最高っ」
「しかも今回は国産のA5ランク肉を使用しています」
「夏油シェフっ、さすがですっ」
「なまえに肉の違いが分かんの?」
「前に牛と豚を間違えてたもんね〜」
「カレーは味が濃すぎて分かんなくなるのっ!」
夏油が、シャンメリーをそれぞれのグラスに注いでいく。テーブルを囲んで座った4人は、手にシャンメリーが入ったグラスを持つと、それじゃあ、と目を合わせた。
「「「「メリークリスマス!」」」」
高く掲げたグラスに、中の水面がチャポンと揺れたのだった。