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花火 ー呪術廻戦ー

第2章 初授業


えぇっと声をあげれたらどれほど良かっただろう。だが、未だ慣れないクラスメイト達の前ではそんな声を上げることさえできない。
頼みの綱であった硝子も、夜蛾の決定に特に異論はないらしく、さっさと夏油の方へ行ってしまう。
思わずその背を追うように伸ばしかけたなまえの右手の前に、黒い影が立った。


「なに面白い顔してんの?行くよ」

「…はい」


項垂れるようにして、なまえは五条の後に続くのだった。



校舎内に一歩足を踏み入れると、一瞬背にぞくりとした感覚がはしる。
やはり、いるのだろう。


「ねぇ、なまえって何で学校くんの一週間遅かったの?」


そんな、なまえの緊張など全く伝わっていないようで、隣を歩く五条は日常の一コマのように話しかけてきた。
あれだけ人をコケにして、普通に話しかけてくる精神を疑ったが、きっとアレが彼の通常で、今のこの普通の会話となんら違いを感じていないのだろう。イケメン故の弊害か、と勝手に自己完結したなまえは、できるだけ普通に聞こえるように言葉を選ぶ。


「えっと、インフルエンザにかかっちゃって…」

「初日から?運悪っ」
 
「あはは…まぁ、運は確かによくないほうかも?」

「マジかよ。俺にまで不幸運んでくんなよな」

「ハハ…(やっぱ無理この人苦手っ)」


思ったことを何でもズケズケと口にする五条に、なまえの口からは乾いた笑いが漏れた。
どうしてこんな性格なんだろう、甘やかされて育ったのかなと、つい彼の方へと視線を向ければ、それに気付いた五条もなまえを見返す。

目が合って、なまえの顔は少し赤く色づくのが分かった。非常に残念なことに、なまえは好みドンピシャの顔に弱かった。稀に見るイケメンなのだ、照れるなというほうが難しくて。

そんな彼女を見た五条が、ははーんと、口元に嫌な笑いをのせる。


「何、俺に惚れたの?」

「っ、いやいやいや!違うっ違います!」

「そんな真っ赤な顔で否定されてもね~。まぁ俺に惚れるのは仕方ない、俺ってイケメンだし?」
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