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花火 ー呪術廻戦ー

第8章 遠出


翌日。
新幹線の切符を、両手で握りしめたなまえは、東京駅前に立っていた。緊張のため、手が震えて切符が落ちないか心配になるほどだ。

「何突っ立ってんの」

車から降りた五条が、訝しげな視線をなまえへと向ける。だが、今のなまえにはそんな視線、全く気にならなかった。

××県まで、てっきり車で行くと思い込んでいたが、時間の節約もかねて新幹線で行くのだと、車の中で渡された切符。

何を隠そう、彼女は新幹線に乗るのが初めてだった。

呪術高専に入るまで地方に住んでいた彼女の地域では、移動といえば車だった。東京へ来るのも、親の車に送ってもらっている。新幹線という未知の響きと、東京駅の存在感に胸を高鳴らせていたのだ。

「おーいなまえー?」

「五条…すごいね」

「なまえの頭ん中の話?」

「東京駅の話っ!」


相変わらず、遠慮なく頭に置いてくる腕を払い除けながら、車から荷物を取り出そうと振り返る。
なまえの手が触れる前に、それはひょいと持ち上げられて。


「おっも。お前何入れてんの?」

「え、あ、いや、着替えとか本とか…」

「本?読まないでしょ」

「読むよ!って、荷物いいよ、私自分で…」


荷物を受け取ろうと手を伸ばすが、まるで気づいていないようにさっさと歩き出した五条の後を慌てて追いかける。持ってくれたのかと、むず痒い感情を抑えて彼の顔を見上げる。


「五条、ありが」

「気になってたんだけどさー」


サングラス越しに、ふと見下ろされた彼の目が合う。照れるくらいにイケメンだから、どきりとしてしまうのは仕方がなくて。


「俺の名前、知ってる?」


ニッコリと、わざとらしい笑顔を向けられる。
これは、と。なまえは、すぐに思い当たった。あの花火大会の日に、一度言われた言葉で。
あれから何も言わないから、そのまま有耶無耶に苗字呼びを続けていたが、今は無言のプレッシャーを感じる。


「も、もちろん、知ってます」

「へーほんと!じゃあ言ってみて」

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