第7章 花火大会
「違うよ。私が納得してやったんだから。全く硝子は悪く無いから」
「でも私が提案しなきゃ、そもそもこんなことにならなかったよ。なまえあんなに花火大会楽しみにしてたのに…」
「いやいや、そもそも私が逃げちゃって花火台無しにしちゃったから…逆にごめん」
2人とも謝ったからこれで終わり!と手を叩いてみせると、ようやく硝子は少し笑った。
傷見せてと言われて足を差し出せば、傷に当ててあるガーゼをソッと外していく。
「綺麗に手当てしてあるね。自分で?」
「いや……五条さんが…」
「え、五条が?」
心底驚いたようで、一瞬硝子の手が止まる。
だが、またすぐに手を動かし、「ふーんなるほど、五条がねーへー」と含みのある言い方をされ、何となくいたたまれない気持ちになるなまえ。
反転術式で傷を治してもらい、お礼を言って立ち上がる。全然痛くない。やはり硝子はすごいと改めて思う。
汚れた浴衣を脱いで、五条が用意してくれていた服に着替えたところで、待ってましたというように、硝子が椅子に座った。
「で、どうなった?」
「…どうなった、とは?」
「いやーあの時、五条すごい顔でなまえのこと追いかけてったし、進展あったんじゃないかなーって思って」
問われて、なまえの頭に即座に浮かんだのは、もちろん五条にキスをされたことで。
いや、そんな進展なんて…と顔を赤くしてしどろもどろになるなまえに、これは黒だなと硝子は目を光らせる。
「付き合ったの?」
「ないないないっ…と思う」
「思う?」
「いや、付き合っては、ない、です」
そう、付き合ってはいないはずだ。
だけど、キスはした。
だが、五条がいったいどういうつもりでキスをしたのかもわからない。
ちらりと顔を上げれば、こちらを見つめる硝子。
彼女に相談すれば、答えは出るだろうか。そう思って、恐る恐る口を開く。
「付き合っては、いないんだけど……」
キスをしたかもしれないと言おうとした瞬間、ガチャリと部屋のドアが開き、なまえは口をつぐんだ。ドアをノックせずに入ってくる人物に、1人しか心当たりがいない。