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花火 ー呪術廻戦ー

第7章 花火大会


「あの、重くない?」

「重い」

「ごごごごめんっ、やっぱ下ろして私自分で歩けるからっ」

「嘘だよばぁーか」

相変わらずの憎まれ口だが、確かにその足取りは人1人を抱いて歩いているとは思えないほど軽い。
もう余計なことは言わないでおこうと、なまえは改めて五条の顔をこっそりと覗き見る。
本当にこれから髭が生えてくるのかと思うほど、毛穴も見えない綺麗な顎のライン。
こんな角度から人を見るなんて、普通あんまりできない経験だなとついまじまじと見つめてしまう。


そして、ふと思う。
結局、五条の名前を呼ぶことが出来なかったと。
硝子が考えてくれた計画だったが、夏油の名前を呼ぶだけで終わってしまった。
確かに客観的に見て、これだと夏油に気がある様に見えてしまうかもしれない。

だが、その夏油の名前も、どうやら五条を刺激することになるようで、もう呼ぶことはできないだろう。別に呼ぶことに拘ってはいないが。

はぁとため息をつけば、気付いた五条がなまえの方を見る。距離の近さに、仰け反りたい気持ちだったが、もちろん抱き上げられているこの状態ではそんなことできない。

「なに?」

ため息はなんだと、そう聞きたいのだろう。
至近距離で見る透き通る様な青い瞳は、本当にきれいだった。

「…サングラスなんでしてないの?」

「あー、傑に殴られた時にどっかいった」

「強烈な一撃だったんだね…」

夏油も仏様みたいな顔をしてやるなぁと思わず笑ってしまう。
一度笑うと、今日の出来事が、だんだんとおかしく思えてきて、そこでもまた笑ってしまう。

笑い出したなまえに何を思ったのか、五条がいつの間にか立ち止まり、ジッと彼女の顔を見る。
静かに顔を見る五条に、しまった笑いすぎたか?と思うが、笑いが彼女の気持ちを解したのか、まぁいいかと簡単に気持ちを切り替えられて。

今日は色々あり過ぎたからだろうか。一周回って、不思議な気持ちだった。全能感とでもいうのか。何でもできるような気がした。
そうすれば、自然と思うのは、五条の名前が呼びたいということで。

しつこいと思われるかもしれないが、いつの間にか、硝子に言われたからではなく、なまえ自身が名前を呼びたいと思っていた。

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