第7章 花火大会
「なまえ、あの後大丈夫だった?」
あれから、結局、硝子も夏油も帰ってきたばかりで片付けに忙しく、翌日に4人で浴衣を買いに行くことになり。
せっかくだからと購入した店で着付けてもらってそのまま花火大会へ行こうという流れになった。悩みながらも、選んだ浴衣を男女に分かれた部屋で着付けてもらっている最中に、硝子が別段気にしている様子もなく、そう問いかけてきた。
あの後?と一瞬頭に疑問符が浮かんだが、すぐに食堂の後のことかと思い当たる。
「あーうん、大丈夫。心配かけたよね、ごめん」
「なまえが謝ることじゃないっしょ。五条はなんか言ってた?」
「それがさーよく分かんないんだよね。結局五条の部屋まで言ったんだけど、なんか中身のない感じのとりとめのない愚痴をずっと聞かされてさ…」
天気のこととか今日の朝食のメニューとか…あの場で突然食堂から出て言うことなのかと思うような。と顎に指を当てて思い出すように話すなまえ。話を聞いて、あいつ馬鹿だなと硝子は思う。
「一応、話の区切りに夏油に謝ったら?って言ってみたんだけど、「はぁ?なんで?」だって」
「あはは、今のめっちゃ似てる」
「でしょ?まぁ結局、五条もストレス溜まってたのかなーって思うことにした。つもり積もってたものが、あそこで急に爆発したんだよ」
物知り顔で頷くなまえに、硝子が生温かい視線を送る。
えっ何!?と慌てる彼女に、えー別に〜?と惚ける硝子。そんなやりとりをしている間に、着付けは無事終了した。
ついでに髪もアップしてもらい、改めて鏡の前にうつる自分を確認すると、普段とはまた一味違った自分がそこにいた。悩んだ浴衣の色は紺色で、花の模様が上品に彩られている。
これぞ花火大会だ!と気分の高揚するなまえが隣を見れば、白を基調とした生地に、緑の模様と赤い大きな花が堂々と咲き誇る浴衣を着た硝子が目に入った。泣きぼくろのある彼女が浴衣を着ると、より色気が増したように思えて、思わず右手で口元を覆う。
「硝子…美しいっ」
「感極まりすぎでしょ。なまえは可愛いよ」
ええ、そうかなっと満更でもなく照れるなまえに、硝子の悪戯心がピクリと動く。なまえの耳へと静かに顔を寄せる。
「五条の反応が楽しみだね」