第6章 夏休み
夏休みに入り、五条悟とみょうじなまえは、とにかく2人で行動する時間が増えた。同級生で、学校に残っているのが2人だけなのだから、仕方ないといえばそうだろう。
時々先輩の庵歌姫と冥冥とも顔を合わせる機会があったが、歌姫を馬鹿にする五条と度々トラブルが起こるので、そちらとは行動を共にすることはなく。
昨日も、2人で呪術訓練をした後になまえ の部屋でDVD鑑賞をし、そのまま、クリアするまで終われませんルールのマリオゲームが始まったのだった。
朝日がカーテンの隙間から差し込む中、1人は死体の様にベッドから片腕をダランと落として横たわっており、もう1人は若干血走った目を見開きながらゲーム画面に向き合い、コントローラーを操作している。
ゲーム画面の赤い帽子を被ったキャラクターが、ボスに最後の一撃を加えたところで、ついにゲームのエンディングが流れ始めた。
「よしっ!!ついに全クリ!!おいなまえ、」
コントローラーを握りつぶす勢いでガッツポーズを決め、この喜びを分かち合おうとすぐ隣にいるはずのなまえへ声をかける五条。そこでようやく、彼女がほぼ死体と化していることに気づく。
こいつ寝ていやがる…と額に青筋を浮かべた彼は、徐に立ち上がると、寝ている彼女の背に体重をかけて座った。グフっと空気の抜けるような情けない音が彼の下から聞こえる。
「言い出しっぺの人がなーに寝てんのかなー?」
「…が、がんべんしてくだせぇ…おだいかんさま…ついでに、言い出しっぺは五条さんです…」
「マリオをしようっつったのはなまえでしょ?」
「…クリアするまで終われませんにしたのは、五条さんです…」
私は無理だと言いました…と、か細く訴えてる声を、五条は華麗にスルーする。クリアしたら腹減ったし、飯行くか、飯!と、半分死んでいるなまえの腕を掴み、半ば引きずるようにしてベッドから下ろすと、そのままずるずるとドアを開けて部屋の外へと出る。
瞬間、ギャーーーーッと、まるで世にもおぞましいモノを見てしまった時に出る様な悲鳴が響き渡った。
思わず片耳を塞いで、うるせっと声を漏らす五条に、反応する元気もないなまえ。
「五条っ、あ、ああああんたっ、なんでなまえの部屋から、なまえと一緒に出てきてんのよっ」