第15章 差異
あからさまに嫌そうな声を出す七海にお構いなしに、「そー!脱サラ呪術師」と五条は繰り返す。
そういうとこ…となまえは細目で突然腕を引っ張った五条を見ながら、脱サラということは、と思う。
一度、やめたのか。
呪術師を、やめたんだ。
なぜだなんて、聞かなくてもなまえには思い当たることがあった。なぜなら、彼女にとって、あれからまだ日は浅い。
4人の同級生だった彼女達とは違い、七海達は2人だけ。たった2人のクラスメイトで、性格は違えど、2人はまるで互いに足りない何かを補い合うように仲が良かった。
そんな、大切な仲間がいなくなってしまったのだから。
まさか自身の死も、彼が呪術師をやめた理由の一つになったとは気付かず、なまえは思わず口を開いた。
「でも、なんでまた呪術師に…?」
彼女の言葉に、七海も、彼女の後ろにいた五条も、なまえを見た。
「…労働も、呪術師もクソだと分かったからです。同じクソなら、少しでも適性のある方がいいかと」
「な、成る程、消去法的な」
「ええ。ですからみょうじさん、あなたはー」
続く言葉は、なまえの耳に届かなかった。
なぜなら、彼女の後ろにいた五条が、なまえの耳を両手で塞いだからだ。
突然のことに、彼女は目を見開いて。そして、勢いよく振り返り、非難がましい目を五条へと向けた。
だが、五条の視線は彼女ではなく、七海へと向けられ、彼に向かって何やら言葉を発しているのか口を動かしているのが見える。
(って、何も聞こえない!)
耳に当てられた手をどかそうとするが、全くびくともしない。四苦八苦していれば、ようやくその手が外された。