第15章 差異
「〜、悟!何すんの!」
「めんごめんご!今超音波警報出てたからさ」
「はぁ?」
何言ってるんだと彼を睨むが、どうにもまともに答える気はないようで。疑問符を飛ばしながら正面に向き直れば、サングラス越しに七海と目が合う。
何か言い淀むようにして開きかけた七海の口は、一度閉じ。それからまた開く。
「私は、どんな経緯があれ、あなたが生きていてくれて良かったと思っています」
七海がそっと、右手でサングラスを直す。
「できることなら、幸せになっていただきたい。…灰原の分も」
七海は、失われた同級生と、同時期にいなくなってしまった私を、重ねているんだろうか。
ぼうっと話を聞いていたなまえの肩に、後ろから大きな手がポンと軽く置かれた。
「んじゃ、そろそろ行こっか。なまえ」
「あ、…うん。…えっと、七海」
さんを付けるべきか悩みながら、あえて付けずに彼の名を呼ぶ。七海の目を見ながら、なまえは少しだけ笑ってみせた。
「ありがとう」
少しだけ見開かれた彼の目からは、僅かに学生時代の七海が垣間見えた気がした。