第15章 差異
表情は変わらずとも、七海の機嫌が一段階下がったのがなまえには分かった。
だが同時に、五条が当たり前になまえへと接する姿に、先程まで七海が少なからずなまえへと抱いていた警戒心も消えていく。それだけ彼も、尊敬はできずとも五条という人間を信頼していた。
先日、硝子へしたような説明を次は七海へとするのを聞きながら、なまえは2人を見る。
(なんか…本当に七海、大人になったんだなぁ…)
硝子の時に感じた、胸がざわつく様な違和感が、今また彼女にじわりと忍び寄る。
11年後の世界だから、当たり前なのだが。分かっているはずなのに、彼を七海と言い切るには、彼女の記憶にある彼とはあまりに違っていて。
そして、そんな七海と当たり前のように話をする五条。見慣れない目隠しをした彼が、大人になった七海と話をすると、2人とも、知らない人の様に見えて、ドキリと心臓から嫌な音が聞こえた。
「事情は分かりました」
五条から話を聞いた七海が、サングラス越しになまえを見て、ハッと彼女も意識を切り替える。
「そんなことが本当にあり得るのか疑わしいですが、五条さんの六眼は信用するに値します」
「おい、そこは僕自身がって言えよ」
「みょうじ先輩…いえ、みょうじさんとお呼びすべきですね」
「(おぅ…悟さん、華麗にスルーされてる…)あ、いや、今は私の方が年下なので、別にさんとかは…」
「いえ、私の中ではあなたは尊敬する先輩のままなので」
「!」
さらりと尊敬するなんて言われて、冷静な七海とは正反対に、なまえは驚きで頬をキュッと上にあげる。どんな顔をすればいいのか分からず、あからさまにオロオロと周囲に視線を散らせるなまえに、五条は徐に彼女の腕を掴むと、グッと自分の方へと引っ張った。
「っ!?わっ、」
「そーだなまえ。七海さ、脱サラ呪術師になったんだよ」
「っ、え?あ、だ、脱サラ呪術師?」
「その言い方、やめてもらえますか」