第15章 差異
高専にくると、その思いは強くなる。かつて同じ学舎に通っていた仲間達は、みんな須らく働いているのだから。特にこの場所では、補助監督の人達が忙しく動いていて、若干の肩身の狭さも感じる。
「あ、ごめんなさい、こんなの言ってもどうしようもないことなんだけど」
「いえ!私でよければいつでも聞きますから!私もみょうじさんには高専時代によく話を聞いてもらっていましたし」
「あはは、大したこと聞いてないけどね。伊地知はクラスメイトがいなかったから大変だったよね」
「ええ、まぁ…」
クラスメイトがいないということよりは、五条悟という男が先輩であったということが一番大変であったのだが、大人である伊地知はさすがに口にはしなかった。
何より、なまえがいた時は、面倒見のよい彼女が、伊地知にうざ絡みする五条を諫めていたが、いなくなってからはお察しの通りで。勿論それだけではないのだが、彼女の存在の大きさを痛感したことを覚えている。
そして今また、なまえに接する五条の姿を見れば、彼にとってなまえが特別な存在であるのだということはすぐに理解できた。
「あの、もし私に何か手伝えそうなことがあったら、させてもらえると嬉しいな…」
何かしてないと落ち着かないからと眉を下げるなまえは、呪術師としてはあまりにも普通の人間で、本当にあの世代の1人であるとは信じがたい。あの頃の彼女と、変わるはずもないその優しさに、伊地知は胸が少し震えた。
「でしたら、一つ、お願いしてもいいですか」
どこか不安げな彼女が少しでも安心するようにと、伊地知はできるだけ優しく笑いかけた。