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花火 ー呪術廻戦ー

第14章 高専


私の立場はいったい何なんだろうと少し頭を悩ませながら、とりあえずは目の前のパンダが危険な物ではないと分かり、恐る恐る右手を差し出す。

「えっと、元高専3年のみょうじなまえです」

「元って何だよ?まー別にいいけど。2年のパンダだ」

え、それは知ってる。

パンダに手を握り返されて、冷静に頭の中で突っ込む。パンダがパンダなのは周知の事実だが。期待していたのは固有を識別する名前で、パンダじゃない。ついでに肉球は想像していたほど柔らかくなかった。

パンダが高専の生徒として通っている事実に驚きつつ、本当の名前をどうやって聞けばいいのか思案していると、パンダが出てきた曲がり角から、眼鏡をかけたポニーテール姿の女子生徒と、小柄で薄い色素の髪の男子生徒が姿を表した。

ポニーテール姿の女性と目が合い、切長のその目が睨む様になまえを見て、怖気付いたように一歩下がる。

「なんだぁこいつ。パンダ、誰だよ?」

まさかの『パンダ』が名前なのかと、別のところで衝撃を受けるなまえ。犬にドッグって名前をつけるよりセンスがないと、心の中でこっそり呟く。

「元高専3年のみょうじなまえらしいぞ」

「元?なんで元なんだよ。つうか、3年にはいない顔だよな」

「しゃけしゃけ」

これを、カオスと言わずして何と言うのだろうか。
しゃべるパンダにヤンキー口調の女子、急に魚の種類を連呼しだした男子生徒。怖い、となまえは更に一歩下がった。

「なまえ、こっちの口の悪いのが真希で、語彙がおにぎりの具しかないのが犬巻棘だ。どっちも二年生」

「…あ、ご丁寧にどうも。みょうじなまえです…」

「引いてる?」

「いやそんな…………モーゼぐらい」

「めちゃくちゃ引いてんじゃんっ」

「明太子」

「う、梅干し」

「そこ無理して具で会話しようとしなくていいから」

「つうか、みょうじなまえってどっかで聞いたことある気がすんだよなぁ…」

考え込むように顎に手を当てる真希。その目は相変わらず睨みつけるような鋭さがあるが、ようやく目付きが悪いだけなのかもしれないという真理にたどり着く。
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