第14章 高専
「それで、なまえの記憶は3年生の途中であることは間違いないんだな?」
「はい。3年生の秋ぐらいまでです」
「そうか。それなら当時と同じように、高専に寮を用意して、3年生に編入という形が、」
「ストーップ!ちょっと僕、それについて学長に話があるんだよね」
話を途中で遮った五条が、なまえはちょっと出ててくれる?と目隠しのせいで見えない表情をこちらへと向ける。
この流れは聞いていなかったが、特に逆らう理由もない。ただ、学長と一対一で話があるなんて、学生の五条からは考えられないような発言で、なんだか本当に先生みたいに感じると失礼なことを考える。
「それじゃあ少しだけ出てますね」
学長室のドアを開けようと近づけば、「なまえ」と呼ぶ夜蛾の声に彼女は振り返った。
「生きていてよかった」
「…ありがとうございます」
こんな時、どんな顔をすればいいのかよく分からない。分かっているのは、嬉しいという感情で。下手くそに笑って、なまえは部屋を出た。
「さて、と」
部屋の外には、ソファーが置いてあるが、座って待つ気はない。出てるとは言ったが、どこで待つなんて言わなかった。
(校舎の中、見てこよ〜)
ふんふーんと音符を飛ばしながら、最強最悪の世代に毒されている彼女は足早にそこから立ち去ったのだった。