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花火 ー呪術廻戦ー

第14章 高専


東京都立呪術高等専門学校。
その一室である学長室。広いが殺風景でもその部屋の奥、小上がりとなっている畳の部分には、インテリアとしてはあまり似つかわしくない、多くのぬいぐるみが並べられていた。
それらに囲まれる形で、胡座を描き、新しく部屋を並べられることになる『可愛い』の一つを作っているのは、誰よりも『可愛い』から遠く離れた位置にいる、高専学長の夜蛾正道その人だった。

近づく呪力の気配に気付いていたが、夜蛾の手は止まることなく、淀みなく動き続ける。


「っ、学長…」

バタンと、学長室の扉を乱暴に開けて、部屋へと足を踏み入れたのは、今日ここで会うことを約束していた、彼の元教え子でもある五条悟だった。
その表情は、いつもの黒いアイマスクに隠されて見えないが、肩を庇うように歩く彼の足取りは、ふらりと覚束無い。

瞬間、彼が口元を右手で覆う。そして、咳き込むと同時に、赤黒い液体が、その手を伝った。ポタポタと、床に赤いシミを作る。


「…で?その茶番をいつまで続ける気だ?悟」

一見すれば、満身創痍なのではないかと思える五条の姿に、ピクリとも眉を動かすことなく、夜蛾が口を開く。その言葉に、つい一瞬前まで体をふらふらさせていた五条は、ピンと背を伸ばして、赤黒く汚れた手を弧を描いている口元から外し、肩の横で広げて見せる。そこには、破けたビニール袋が乗っていた。

「もー!もっと心配してくんないと!わざわざ血糊まで準備したのに!」

「殺しても死なないような奴が何を言っている。それより5分の遅刻だ」

「細かいなぁ。ドッキリで楽しませてあげたし、チャラみたいなもんでしょ」

「チャラになるか。それより要件はなんだ?ドアの外にいるやつか?」
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