第13章 再会
このネタをいつまで引っ張るんだろうと思いながら首を傾げるなまえに、そ!と再び五条が隣に座る。ボスンと柔らかいソファーが沈んで、体が傾き、なまえの肩が五条の体に当たった。
「悠仁と野薔薇、廃ビルで会ったって聞いたけど」
その名前には、もちろん聞き覚えがあった。廃ビルで、五条と会う前に話した、高専の新入生。そういえば、虎杖と名乗った彼が、先生を待たせていると言っていたことを思い出した。
改めて、隣に座る五条の姿を見ると、その身に纏う服は、やはり高専の教員が着るもので。
「………え?本当に本気で、先生?」
「そのツチノコ見つけたみたいな反応、ムカつくんだけど」
「ツチノコの方がまだ現実味あるよ…?」
心からの彼女の言葉に、五条が無言でなまえの頭に腕を回し、ギュゥっと締め付ける。痛い痛いと慌てて彼の腕をタップすれば、ようやく頭を解放された。
(…この人、こんなに気が短くて本当に先生やれてる?学生の時から成長してなくない?)
「まぁそれはそうとして、電話、」
「ここにいていーよ」
「え?」
軽い調子で言われた言葉に、五条の顔を見るが、サングラスがあるとやはりその表情は分かりにくい。
「行くとこないんならここにいればいいじゃん」
「…え、あ…でも、迷惑?っていうか」
「はぁ?学生の時は散々部屋の行き来してたじゃん。その延長みたいなもんでしょ?いいから僕の好意に甘えておきなって」
本当は、迷惑云々よりも先に、断らなくてはいけない理由があったはずなのだが、五条の頼まれてあげてる感と推しの強さに、理由が霧散する。
確かに、よく五条の部屋に行き来していたのは事実で、今更迷惑も何もないのだろう。嫌なら絶対にこんなことは言うはずもない人間だ。
実際に、行くところはないから困っていたこともあり、うまく思考がまとまらないままに、「あぁ…うん、えっと、それじゃあ…とりあえず落ち着くまで、お願いします…?」と押しに弱いなまえは疑問符を付けながら頭を下げる。
そんな彼女に、「はーい」と話は終わりとばかりに五条が立ち上がった。