第13章 再会
他にも救出してほしかった物はあったが、DVDが残っているだけ奇跡だろう。有難いと思いながら、今の自分に、帰る場所がないという事実を確認して、思わず頭を抱えたくなった。
11年経ったと最初に聞いた時も、なぜか当たり前に帰れると思っていたその場所。よく考えれば、もし生きていたとしてもその場所には住んでいないだろうし、そもそも死んでしまっていたというなら、11年も部屋をそのまま残すわけがないだろう。
「悟、電話貸してもらってもいい?」
「どこにかけんの?」
「高専に…」
「なんで?」
サングラスをかけたことで、赤くなった目を見られることがなくなった五条が、なまえの顔を覗き込む様にして問いかける。
「いや、夜蛾先生に現状を相談しようと思って」
「なんで?」
「(なんでなんで妖怪だな)そりゃ、住むとこないし、とりあえず高専に置いてもらえないかなって」
現時点で、今日の宿にすら困っている。
実家に行くという選択肢は無かった。昔一度、『逢魔時 戻』を使用してひどく迷惑をかけた。今度は死んだはずの娘が11年前の姿で現れるなんて、よりいっそう私は『化け物』になるだろう。
そう考えれば、高専なら受け入れてくれるだろうという信頼があった。「まだ夜蛾先生が高専で学長してるか分かんないけど」と呟けば、「ばんばん現役」と悟が口元に笑みを描いた。
「因みに僕も、高専で先生やってるよ」
「はいはい。」
よりによって先生だなんて、大して面白くもない冗談に付き合う気もなく、流す様に返事をすれば、ムッとした様に五条が口を尖らせる。とても30近くには見えない表情に、吹き出しそうになるのを堪えた。
「ホントなんだけど。なまえも僕の可愛い生徒達に会ったんでしょ?」
「悟の生徒?」