第13章 再会
「あ、だけど、とにかく一回、高専に顔出したい」
いくら何でも、住むところが確保されたからといって、このままで良いわけがない。なまえという存在は、学生の時に死んでしまい、存在していないのだ。今後どうすべきなのか、自分では分からないが、やはり高専で相談すべきだろう。
五条が先生をしていると聞いて、彼に相談できることも有難いが、なんだかんだ学生時代の印象しかない彼女には、先生といえば夜蛾先生というイメージで。
見上げた彼の顔が、めちゃくちゃ嫌そうに歪んでいて、なまえは思わず、えっ、と困惑する。
「なにその嫌そうな顔…」
「イヤベツニ。はー…分かったよ。行くなら高専のみんなにサプライズしなきゃね!」
「サプライズ?(お土産とか?)」
「とりあえず今日は遅いし、明日な」
五条の大きな手が、なまえの髪をくしゃりと撫でた。そのまま、その手がなまえのやつれた顔を確かめる様に軽く添えられた。彼女は気付いていないが、目の下のクマもひどい。
そんな彼女が、突然ふふっと笑って、五条の手が止まる。
「あ、ごめん。いや、悟に会えてよかったと思って」
こんな訳の分からない状況で。取り乱すこともなく、安心してソファーに座っていられるのは、間違いなく悟のおかげだとなまえは思う。
廃ビルにいた自分を発見してくれたのが、悟で本当によかったと彼女が笑えば、目を見開いていた五条も、つられるようにして笑った。
「僕もなまえに会えてよかったよ」
それは、心からの声だった。
もう一度、五条の手がなまえの頭に触れる。
「おかえり、なまえ」
「ただいま、悟」
またこの世界で君に会えたことに、感謝を。