第13章 再会
死んだ、と。顔を伏せたまま告げた五条を、なまえは瞬きすらせずに見つめていた。それが真実だということは、漠然と理解した。
彼の声には、いつもみたいな明るさも軽さも、存在しておらず。
なまえの記憶としては、本当につい先程受けていた任務。そこで死んだなんて、きっと衝撃的なことのはずなのに。どこか冷静でいられたのは、目の前の五条の姿があったからだった。
大人の姿のはずの彼が、その時ばかりは彼女がよく知る学生時代の五条悟の姿に重なった。
適当で軽薄で、だけど憎めない彼。私が11年も前に死んだことなんて、「なんで生きてんの、ウケる」ぐらいに流してもいいような性格なのに。
それなのに。
彼は、引きずってしまったのだろうか。
自分が死んだことを。11年も前に死んだ、同級生のことを。助けられなかったと、思って。11年間も、背負って生きてきたのだろうか。くたびれたぬいぐるみを、捨てずに持っていてくれるほどに。
そう考えたら、堪らなくて。
自然と手が伸び、伏せたままの彼の顔を、その表情も見えぬまま、引き寄せる様に抱きこんでいた。はっと、驚いた五条の気配を感じたが、この時ばかりは、恥ずかしいとか、そんなもの感じなかった。
表情が見えないはずの彼が、泣いている様に思えて。
どうして。普段は適当なのに。
自分の死なんか、そりゃあ、すぐに忘れられたら悲しいけれど。1ヶ月ぐらい悲しんでくれたら、それでいい。あとは忘れてくれたってよかった。
一番背負いそうにない人間が、背負うなんて思わなかった。
でも
「ありがとう…悟」
忘れないでいてくれて。
11年間も、背負ってくれて。
囁くようななまえの言葉に、五条の体が、僅かに震えた。なまえの肩のあたりへ頭を抱き込まれた彼は、一切抵抗することなく。
しばらくして、静かに、彼の両手がなまえの背中へと回された。
その手はまるで。迷子の子供が、探し物を見つけて縋り付く様に。