第13章 再会
「えっと…その反応は、どういうこと?」
「いや……僕でもこんなに言いにくいことがあるんだと思って、自分に驚いてる」
「うぇ、大人の私、そんなにやばいの…?」
「んー…ていうか、」
言いながら、五条はなまえの顔を見る。
彼は、自分の性格の悪さを自覚している。何年も前、現在の教え子である伏黒恵が未だ小学生に足を突っ込んだばかりの頃に、そんな幼い彼の前で、彼の父親の屑っぷりを説いた鬼畜さだ。なんなら、そのまま彼の父を殺したのは自分だと告げることにも躊躇いがなかった。
だからこそ、そんな自分がこんなにも言葉に迷う日がくるとは思わなかった。
硝子がことあるごとに言っていた、五条がなまえに弱い、という言葉の意味を、11年越しに痛感することになるとは。
「逆に聞くけど、なまえはどこまで覚えてんの?」
結局、そこなのだ。
なまえは、自分の術式で、自身が11年時を遡ったと思っているが、五条はそれはあり得ないと知っている。なぜなら、そもそも、11年後の世界に彼女は存在していないのだから。
五条の問いに、「どこまでって…」となまえは考えるように視線を上へと向ける。
「さっき言ってた任務先で、蜘蛛型の呪霊を祓ってて…その呪霊の攻撃を避けるのに、術式を発動しようとしたとこまで、かな」
実感としては、その瞬間に突然あの廃ビルへと移動したような感覚だ。
「…俺は?」
あ、悟だ。
彼の「俺」という一人称にそんな感想を抱いた。悟が「僕」なんて、ちょっと変な感じがしていたけれど、いつもの「俺」という言葉を聞くと、少し安心して笑ってしまう。
笑った彼女を訝しげに見る五条に、なまえはごまかすように口元に手を当て、咳をするふりをした。
「んん、…俺は、って?」
「その任務の時、お前のこと助けに行ったんだけど」
「そうなの?ごめん、それは覚えてなくて…」
「…いや、謝んのは俺の方」