第13章 再会
五条が話した、11年というあまりにも長い年月に、言葉を失ったなまえ。その様子を黙って見ていた五条に促されて、先程まで座っていたソファーに再び座り直した。
体が沈み込んで、ようやく、ゆっくりと口を開いた。
「…それじゃあ、本当に悟なんだ…」
「信じた?」
「ていうか、納得、した」
隣に座るその人物が、大人になった五条悟なのだと言われれば、それほどしっくりくるものもない。
正直に言うならば、彼女は想像を超える年月に、半分、思考を停止させていた。あまりに現実味のない長さに、その重みを受け止めるほど考えを深めることができなかったのだ。
「でも…本当に11年?にしては、悟若くない?」
「よく言われる。七海は逆に老けたよ」
「えっ…分かる気もするけどなんかショック…」
可愛い後輩が、数日目を離した隙に11年老けたなんて、衝撃が強すぎる。いや、七海だけじゃない。親友の硝子も、歌姫先輩も、冥先輩も。みんな、歳を重ねているということだろうか。
想像しようとして、その事実に恐怖を感じ、思考に蓋をする。
「私…」
どうしてだろうと、思う。
「なんで、11年も戻したんだろう…」
11年後の自分が。いったい何を考えて、そんなに長い年月を戻したのか。戻した時は、もう二度と戻らないのに。
自嘲気味に呟いた言葉に、「戻した?」と五条が反応する。
「うん…だって、これって、私の術式だよね?逢魔時の、〝戻〟。それで私、自分の時間を戻しちゃったんだよね…?」
11年後の私が、と。話したなまえに、五条はその術式の存在を思い出した。確かになまえには、五条達の前では一度も使ったことがない、〝戻〟という力があった。
六眼から見える情報で知っていたし、特に隠すことのない彼女から、その話は聞いてもいた。
「11年後の私って、何してたの?」
知ってる?と、どこか苦い顔をして問いかけるなまえは、11年を戻した、自分の知らない未来の自分を、好意的には思えなかった。
だから、いったい未来の自分は何をしていたのだろうと、気になったのだ。どんな理由があって、戻したのだろうと。
だが、待てど返事がないことを不思議に思って、口を閉ざしたままの五条に首を傾げる。
当の五条はといえば、そのまま、右手で目元を覆い、はー、と大きく息を吐き出した。