第13章 再会
「あ、悟、だよね?なんか、夜蛾先生みたいな服着てるし…目隠し、それ、どうしたの?髪の毛逆立ってて、知らない人みたー、」
近付いたからこそ感じ取ったその違和感に、言葉と、足が自然と止まった。
元々、身長は高いと思っていたが。ここまで高かっただろうか。身長だけではない。彼女が知る五条とは、何かが、違う気がして。
思わず後ずさろうとした彼女の右腕を、一瞬の間に、目の前の人物が掴んだ。
「!?」
早い、となまえは目を見開く。
決して油断はしていなかったはずなのに、動きが分からなかった。ほとんど条件反射で振り払おうとするが、それほど力が入っているように感じないのに、掴まれた腕を全く動かすことができない。
焦って、思わず見上げた視線の、その先で。なまえの腕を掴んでいる手とは、反対の手が、彼自身の目を隠している黒い布を掴んだ。知らず、なまえの喉がごくりとなる。
そのまま、無造作に取り払われた黒い布。
その下から出てきたのは、見慣れた、青い瞳で。その顔は、彼女の同級生である五条悟と、本当によく『似ていた』。
「(誰…?)」
あまりにも似ているから、掴まれている腕に対して抵抗すべきなのか、それすらも躊躇う。
だが、決定的に違うのは、年齢だろう。目の前にいる人物は、彼女が知る彼よりもいくらか年上に見える。
着ている服から、恐らく高専の教員だと思われるが、高専で三年間過ごしている彼女にも見覚えがなかった。
青い瞳が、真っ直ぐになまえを見下ろす。穴が開くんじゃないかと思うぐらいに凝視され、場の空気も読まずに、なまえの頬がほんのり色づいた。綺麗すぎる顔まで、本当によく似ている。
「ははっ……僕、頭おかしくなったのかな」
どこか、自嘲気味に。呟かれた声も、やはりよく似ていた。頭がおかしいとはどういうことだろうと思いながら、なまえは口を開いた。
「あの……ごめんなさい、人違いで…。五条悟、さんの…親族ですか?」
兄弟がいるという話は聞いたことが無かったが、確実に血の繋がりがありそうだ。見上げて少し首を傾げれば、目の前の人物は、小さく息を飲んだ。
「……親族?」
「そ、その、五条悟、さんによく似ていらっしゃるので…。あ、私は悟さんの同級生なんですけど…」