第13章 再会
なまえは、瞬きすらしたつもりは無かった。
それなのに、目の前に広がる景色が一変して、これもまた、戦っていた呪霊の力なのかと勘違いしそうになった。
「(いや、違うこれは…)」
自身の力、『逢魔時 戻』を使ったのだと分かったのは、呪力がほとんど空っぽになっていたからだ。あの力は、持っている呪力のほとんどを使ってしまう。
ということは。
恐らく、自分は死にかけたのだろう。記憶も全て戻るため、なぜ自分がその力を使ったのか、本当の真実は分からないが。
極力使わないようにしていたその力を、使うしかない事態。つい一瞬前、呪霊による針の攻撃を受けそうになったこと。
これらのことから、呪霊の攻撃を受けてしまった自分が死にかけて、攻撃を受ける前まで時間を戻したと考えるのが普通だ。
「あれ?俺、てっきり呪霊だと思ったんだけど…」
「どう見ても人間よね。ていうか、高専の制服着てるじゃない」
ただ、分からないのは、目の前に立つ、高専生らしき男女二人組だ。因みに、男の方は、小さな男の子を抱っこしているから、正確には三人組。いったいどんな状況と場所で時間を戻したら、こんな人気のないオフィスの様な場所にいて、目の前に知らない人物がいるのか。
突然の環境の変化もあってか、また頭がずきりと痛む。とりあえずは、もう呪霊もいなさそうだからと、なまえは力を抜いて笑顔を浮かべた。
「えっと、こんにちは?高専生、だよね?」
「おぉ、喋った!」
「あんたそれ失礼よ。私は呪術高専一年の釘崎野薔薇」
「俺は一年の虎杖悠仁!」
…誰? と、笑顔を浮かべたまま、首を傾げる。
今年の一年は伊地知だけじゃなかっただろうか。まさか京都校の人だろうか。
浮かんだ疑問に、なまえはとりあえず蓋をした。