第11章 絶望
「っ…ご、ごめ…ごめん……悟…ごめん……私が、…弱いから…弱かったから…」
体調が悪かった、とか。術式が使えなかったから、なんて。そんな言い訳が、なんの慰めになるだろう。
絞り出したなまえの言葉は、逆に五条に火をつけることになった。
「弱ぇことを言い訳にすんなっ!」
「五条さん!」
診察をしていた補助監督の女性が、なまえから五条を引き剥がした。
収まりきらない彼は、「くそっ!」と歯を噛み締めると、来た時と同じぐらい乱暴にドアを開けて、医務室から出て行った。
残されたなまえは、崩れ落ちるように、椅子に座る。
「だ、大丈夫ですか?」
心配する女性の声が、どこか遠かった。
本当に、五条の言う通りだと思ったのだ。
もし、夏油と一緒に任務に行ったのが、五条だったなら。きっと夏油を止めることができただろう。
ー 私に、もっと力があれば… ー
診察を終えて、ふらりと医務室を出たなまえ。その足取りは重いが、それを指摘する人間は誰もいない。
意識を取り戻した日から、体調は大分良くなったが、まだ頭痛は続いていた。
「なまえ、よくなったのか?」
あの日聞いた以来だろうか。
夜蛾の声に、なまえは顔を上げる。
「…あ、はい。全快です」
出した声は、意外にもしっかりとしていた。
頭痛はあったが、これぐらい、あの時に比べれば、体調不良の一つにも入らないと彼女は思った。
ふむ、と少し考え込む夜蛾。
「任務、受けてみるか?」
考えるよりも先に、彼女は頷いていた。
もっと、強くならなければいけない。もっと。