第11章 絶望
殺した、と。夜蛾ははっきりと告げた。
首がとんだ、少女の記憶が頭をよぎって、なまえの体はびくりと揺れた。
声は、もう出る。だが、答えることなんて、なまえにできるはずがなかった。答えるつもりも、無かった。
しかし、夜蛾にとっては、答えないことが、何よりの答えで。そうか、と呟き。彼は静かに立ち上がる。
「回復するまで任務は入れない。ゆっくり休め」
今年は、忙しい年だ。湧き出る呪霊の数は多いのに、術師は少ない。本当なら、一日でも早く、なまえにも任務へもどってほしいだろう。
それが、分かっているから。布団に顔を埋めたなまえは、静かに涙を流した。
夜蛾の言葉に甘えて、数日、なまえは体を休めた。自分の部屋と、医務室を往復する日々。
その間、硝子とは何度か顔を合わせた。事情を知った時、硝子も何も言えず、互いに言葉は無かった。ただ、夏油と一緒に任務へ行っていたなまえの気持ちを思い、長い時間、彼女の隣に座っていた。それだけで、なまえは少し、救われた気がしたのだ。
だが、救われてはいけなかったのかもしれない。