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花火 ー呪術廻戦ー

第11章 絶望


彼女が目を開けると、白い天井が目に入った。
起きがけの白は眩しかったのか、僅かに顔を顰める。思考は、非常にゆっくりだった。まるで、何かを拒むように。
何度か、彼女の目が瞬きをして。

突如、片手で口を押さえて、上半身を起こした。
ぼやけていた記憶が、彼女の頭の中を支配したのだ。押し寄せたのは、衝撃と、吐き気。
えずいたなまえだったが、幸いなことに胃が空だったらしく、口からは何も出なかった。

「っ〜…」

長い時間、寝ていたのだろうか。乾いている様に、喉がひりつく。
押し寄せた記憶は、彼女の心を乱すのに十分だった。あれは、夢だったんじゃないかと、心が縋るものを求める。ヒューと、か細い呼吸が、なまえの口から漏れた。


「目が覚めたか」

そこで始めて、なまえは、担任の夜蛾が彼女が寝るベッドのすぐ側に座っていたことに気付いた。寝ていたそこが、高専の医務室だったことにも。目を見開き、夜蛾へと顔を向ければ、彼は静かに彼女の目を見た。

「なまえ、お前は10日間寝ていた」

告げられたそれに、彼女の目は大きく見開かれる。10日と聞き返そうとして、声がうまく出なかった。喉を押さえる彼女に気付き、夜蛾が、近くに置かれていた、水のペットボトルの蓋を開けて差し出す。ゆっくり飲めと言われて、極力遅い動作で、水を口の中へと流した。喉が嚥下して、なまえの体の中に取り込まれていく。

ひと息ついた彼女から、夜蛾はペットボトルを預かり、元あった場所へと置く。そして、手を組み直した。

「起きたところに申し訳ないが、確認させてくれ」

重々しい、夜蛾の声。それに、何かを察したかのように、なまえの肩がびくりと揺れた。まるで、夜蛾が今から恐ろしいことを言うのだと言わんばかりに、彼女の顔が、恐怖に歪む。なまえは、分かっていたのだ。これから何を言われるかも。押し寄せた記憶が、夢では無いということも。
そんな彼女の表情に、夜蛾は罪悪感を抱きつつ、口を開いた。


「任務先の集落に住む人々を、殺したのは夏油傑で間違いないな?」
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