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花火 ー呪術廻戦ー

第11章 絶望


みょうじなまえは、術式を持って産まれたこと以外は、良くも悪くも普通の子供だった。
周囲に術師が、彼女の祖母しかいなかったのも、彼女の「普通」を助長した。

5歳の時に目覚めた術式は、彼女にとって魔法だった。

隠す、なんて考えは無かった。
それを自慢げに周りの子供達に披露して、鼻高々に喜んだ。時を止めての瞬間移動、鬼ごっこ、かくれんぼ、ドッチボール。術式を使う彼女が負けることなんて有り得なかった。
周りの子供も、すごいすごいと、彼女を囃し立てた。


だがそれは、小学校低学年まで。


周りは徐々に気づきだした。
彼女は遊びでずるをしている。気味の悪い力を使っている。何か人には見えないものを見ている。
隠すつもりが無かったのだから、気付くのは当然だった。段々と、彼女の周りから人が離れていく。

そして、高学年になると、それは顕著になった。

物がなくなった。試合で負けた。怪我をした。教室で飼っていた金魚が死んだ。それらは全部、彼女の仕業だとされた。
その頃には、術式を使いすぎるのはよくないと気づき、使用を控えていた彼女には身に覚えのないことだったが。もうそれは、遅かったのだ。

中学で変わるかと思われたそれは、全く変わらなかった。それどころか、思春期に突入したクラスメイト達に、事態は悪化した。


だから彼女は、使ったのだ。
術式の、もう一つの力を。

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