第11章 絶望
昨年頻繁した災害の影響があったのか、この夏の忙しさは異常な程だった。
特に即戦力の三年生達は、毎日の様に任務に駆り出された。なまえは同じ任務を受ける夏油以外と顔を合わせる機会が減り、毎日嘔吐するようになった。
だが、この忙しさでは、体調が悪いなんて甘えたことも言えない。夏油が日に日にやつれていることにも気付いていたが、彼女にはどうすることもできなかった。
そして。
遺体安置所のドアを勢いよく開ける。
静かに入るんだと、いつもなら注意をする人は、白い布を被せられた横たわる人物を前に、静かに立っていた。
その斜め後ろには、彼女の後輩である七海が、力が抜けた様に丸椅子に座り込んでいる。
恐る恐る。彼女は、静かに立つ夏油の、隣に立った。白い布で覆い隠されたその人物は、ピクリとも動かない。
その布を捲るために、ソッと手を伸ばして。ガタガタと、馬鹿みたいに手が震えた。怖くて、布に触れない。触らないといけない。鼻の奥がツンとして、歯までガタガタと鳴る。
震える手を押さえつける様に布を掴んで、それを静かに捲った。
『みょうじ先輩!』
ボロリと、大粒の涙が彼女の頬を伝った。
次から次へと流れるそれを、拭うこともできない。
そこにはかつて、底抜けに明るい笑顔で自分を呼んでくれた、可愛い後輩の変わり果てた姿があった。
顔に残る、大きな傷が痛々しい。どんなに、ひどい戦いだったのだろうか。