第11章 絶望
白い髪が、風にふわりとなびき、五条悟が覗き込んでいた。その向こうに、家入硝子の姿も見える。
ラフな格好をしている彼等に、今日は休日だったことを思い出した。
「ちょっと実験に協力してくんない?」
ニッと笑う彼に、なまえと夏油は顔を見合わせて、それから、頷いたのだった。
五条から手渡された、ペンと消しゴムをそれぞれ持つ。ちょいちょいと指で合図する五条に、夏油と硝子、なまえの3人は視線を合わせた。
「いっくよー」
硝子の掛け声に合わせて、3人は同時に五条に向かって手にしたものを投げた。勢いよく飛び出したはずのそれらは、五条へと届く前に、ピタリと静止した。夏油が投げた消しゴムは、壁に当たったようにコツンと弾かれる。それが落下する前に、五条は左手で素早くキャッチした。
「うん、いけるね」
「げ、何今の」
「術式対象の自動選択か?」
「そ」
無下限呪術のオートマ化。そうすることにより、無下限呪術をほぼ出しっぱなしにすることが可能になる。
出しっぱなしにするなんて、脳が焼き切れるのではと思うが、それを防ぐのが、彼が一年前に会得した反転術式だ。
「(…悟は、どんどん強くなるなぁ)」
私もがんばらないといけないと。ふと隣を見れば、また夏油が心ここに在らずでぼうっと立っていた。
「げと、」
「傑、ちょっと痩せた?大丈夫か?」
なまえが声をかけようとしたのと同時に、五条が夏油へと声をかける。
ハッと気づいた様子で、夏油は薄く笑った。
「ただの夏バテさ。大丈夫」
「ソーメン食い過ぎた?」