第10章 変化
そうか、と。何か言おうとした夏油の言葉は、その視界になまえの姿を入れて、止まった。後ろめたいことがあるように、その目が逸らされて、なまえは嫌な予感がして逆に目を見開いた。
「悟がどこにいるのか、知ってるの…?」
「いや……」
一旦、口籠る彼。だが、すぐにまた口を開く。
「分からない。ただ、私を倒した男が、」
どうして目を合わせてくれないのだろうと、なまえは思った。
「五条悟を殺したと、言っていた」
これじゃあ、その言葉が真実みたいではないか。
瞬きすら忘れて、夏油を見ていた。夏油がこんな状態だからこそ、真実味を増す言葉。
「そ、んな訳無い」
当事者である夏油が、どんな気持ちでそれを告げたのか、察するところもあったはずなのに、それでもなまえは否定した。否定しなければいけなかった。誰かがそうしないと、現実になってしまいそうで。逸らしていた目を、ようやくなまえに向けて、夏油は頷いた。
「ああ。私はとにかく、盤星教の施設を探す。あの男も、今度こそ殺す」
底知れない感情を目の奥に秘めて、夏油が立ち上がる。これは止められないと分かって、硝子は何も言わなかった。
「…私も探すよ」
「なまえ、」
「手分けした方が早いでしょ?大丈夫、自分の実力は分かってる」
自分の目で、真実を見るのだ。
夏油は、なまえが何を言っても聞かないだろうことが分かり、息を吐いて、頷いた。