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花火 ー呪術廻戦ー

第10章 変化


「行こうなまえ」

「うん」

固まろうとする足を、無理やり動かした。できるだけ、そこに残る血痕を見ないようにしながら。

予め伝えられていた道順で、高専の最下層へと向かうなまえと硝子。途中、血まみれで倒れるメイド服姿の女性を見つけて、慌てて駆け寄る。
倒れる女性の首へと右手を添えた硝子は、一拍して首を振った。

それが、彼女が事切れていることを意味すると分かって、なまえは下唇を噛み締める。彼女が敵なのか、味方なのかも分からないが、人の死を見るのは酷く辛い。
そちらにばかり意識をやっている時間もなく、薨星宮へと急ぐ。そして。

辿り着いたそこで、黒い制服姿の人物が、血を流して地に伏しているのを見つけた時。なまえは呼吸が止まるかと思った。
そんな訳がないと、言葉だけが頭の中を上滑りする。

「っ、夏油!」

慌てて駆け寄り、手を伸ばそうとして、その手が震えていることに気付いた。血の気の引いた顔、胸のあたりが大きく切り裂かれ、傷が露出している。その目は、閉じられていて。

「大丈夫、生きてる」

硝子の声で、なまえはハッとしたように顔を上げた。青ざめているなまえを他所に、素早く手をかざして、反転術式による治療を始める。
なまえはただ、その様子を祈るようにして見ることしかできなかった。


「……、悟は…?」

「夏油っ!」

掠れた声に反応して、なまえは思わず彼の名前を叫んでいた。
薄らと目を開けた夏油が、血溜まりに手を付いて、ゆっくりと上半身を起こす。破けた制服から見える傷は、きれいに塞がっていた。

「…硝子が治してくれたのか。」

「手遅れになんなくてよかったよ。で、逆に五条は?」

「……見ていないのか?」

「メイド服の女性の死体なら、くる途中見たけど」
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