第2章 初授業
校舎内には、どうやら三体の呪いがいたらしく。
五条となまえのペアが二体、夏油と硝子のペアが一体祓って、実地訓練は終了となった。
「なまえもちゃんと呪い祓えたね。えらいえらい。」
「…そりゃどーも」
五条にわざとらしく頭をくしゃくしゃと撫でられるが、最早振り払う元気もなかった。
というか、今更ながらこの人めちゃくちゃ背が高いなと、150センチを5センチばかりプラスした身長のなまえは、首が辛そうに五条を見上げた。
同時に、ふと何かに気づいたように、五条が視線を下げたため、目があってドキリとする。あんなに揶揄われたにも関わらず、相変わらずドキリとしてしまう自分のチョロさが恨めしい。
だがそんななまえには気づかず、どこか真剣な表情をする五条。
「オマエさ…」
「え、…な、何?」
ここにきて、初めて見る五条の真剣な表情。
つられて、なまえの声にも緊張が混じるが、そこで、五条はニッと笑った。
「めちゃくちゃ腕置くのにぴったりの身長してんじゃん!」
この男に期待してはいけない。分かっていたのに。
人の頭に遠慮なく腕を置いて、いい笑顔を向けてくる五条に、今日何度目か分からず、なまえの表情筋が引き攣った。明日、人生で初、顔が筋肉痛になるかもしれない。
「2人とも、実地訓練を経てずいぶん仲良くなったね」
「夏油、違う。顔見て。私の顔見て」
「ははっ、顔だけで呪い祓えそう」
「硝子…つらかったよ…今晩は2人で女子会しようっ」
「いや、今日の夜は一年生が4人揃ったのを記念して、全員でゲーム大会するから」
それはそれは楽しそうに笑う五条に、なまえの顔は更に人のものとはかけ離れるのだった。