第10章 変化
実技訓練と聞いて、それに付き合ってもう少し時間を潰すのもいいかもしれないと、顎に手を当てて彼女は考える。可愛い後輩にも良いところを見せることができて一挙両得だ。
「私も一緒に行っていいかな?」
「もちろんです!」
「教室には行かなくて良かったんですか?」
「うん、大丈夫大丈夫」
「大丈夫じゃねぇよ」
聞き覚えのある声が背後から聞こえて、なまえは動きを止めた。もう夜蛾のお小言が終わったのかと振り返れば、五条に夏油、夜蛾の3人がそこにいた。体格の良い男3人が揃うと、それだけで圧迫感がある。
五条は、偶然見つけたなまえが、一年生の二人組と一緒にいるのを見て、僅かに目を細めた。そのまま、彼女の頭にドサリと右腕を乗せる。
「残念ながらこれから任務でーす。おらなまえ、準備しろよ」
「悟、なまえは今回の任務に参加しないぞ」
「はぁ?なんで?一年の面倒みるほど暇なんだから任務に連れてってもいいじゃん」
「なまえは病み上がりだ。ちょうどいい、今回は一年生の訓練に付き合ってもらう」
「なんでだよ、行けるっしょ?なまえ」
「悟、あまり無茶を言うな。なまえはさっきまで寝ていたんだから」
いやに絡む五条も気になったが、それよりも一年生の前で病み上がりや寝ていたなどと言われることに、まだまだ背伸びしたい年頃のなまえは恥ずかしさを感じた。間違っても昨日吐いたとかは言うなよと念を送りながら、頭に乗った五条を引き剥がす。
突然の二年生登場に、成り行きを見守っていた灰原が良い笑顔で夏油を見た。
「夏油さん達、今から任務なんですね!」
「ああ。2人はこれから訓練かな」
「はい!早く皆さんに追い付きたいのでがんばります!」