第10章 変化
翌日、医務室で目覚めたなまえ。
もう大丈夫という太鼓判をもらい、意気揚々と医務室を後にした。
昨日、いつまで五条が側にいてくれたのか彼女は知らなかったが、溜まっていたもやもやを吐き出せたからか、夏油と硝子が医務室から出て程なく、眠りにつくことができた。しっかり睡眠をとることができたからか、久しぶりに体も軽い気がした。
初夏は任務も増えて、知らずのうちに体に負担がかかっているのかもしれない、気をつけないとと彼女は思う。
一度部屋に戻り、服を整えてから教室へ向かう。その途中にあるテレビ付きのホールから人の声が聞こえて、ん?と彼女は歩く速度を緩めた。
誰かいるのだろうかと、ソッとホールを覗き込み。そこに、夜蛾と、その前で正座する同級生3人の姿を認めて、彼女は極力気配を消して顔を引っ込めた。完全に、昨日の任務のお小言だろうと見当が付いたなまえはそのまま抜き足忍び足で、来た道をUターンする。
苦楽を共にする仲間達だが、苦が回避できるならそれに越したことは無い。心の中で合掌しながら、できるだけ離れようと廊下を早足で歩く。
適当に校舎を練り歩いたところで、そろそろ戻るべきかまた早いか頭の中で計算する。
「みょうじ先輩!」
かけられた声に、なまえは足を止めた。先輩という響きに、彼女の表情は心なしかきりりと引き締められる。声のした方を向けば、そこには彼女が可愛がってやまない、後輩の灰原雄と七海健人の2人が立っていた。
すでに2人ともなまえより断然身長が高いが、彼女の目のフィルターを通すと、どうにもこれが可愛い2匹の子犬に変換されるようだ。駆け寄ってくる灰原と、いつもどこか不機嫌そうに歩いてくる七海に目尻が下がりそうになるのを必死に堪える。
「おはようございます!何してるんですか?」
「おはよう。ちょっとほとぼり…じゃなかった、ちょうど教室に行こうかなと思ってたところだよ。2人はこれから授業?」
「はい!」
「呪術の実技訓練です」