第10章 変化
結局、一人になりたかったはずのなまえの前には、いつの間にかいつものメンバーがいて。車の中での嘔吐を思い出し、気まずげに目を泳がせた。しかし、当人達を前にしてしまえば、逃げることも叶わない。
覚悟を決めて、グッと下唇を噛み、勢いよく頭を下げた。
「あ、あ、あの、先程は、皆さんに大変なご迷惑をおかけして、その、すみませんでしたっ」
夏油と硝子はといえば、突然頭を下げた彼女に、パチパチと目を瞬かせた。なまえの体調を心配して、様子を見にきたつもりだったが、まさか頭を下げられるとは思ってもいなかった。2人は目を合わせて、そして吹き出した。
「なんでそんな他人行儀なの」
「あの時は驚いたけどね。迷惑なんて私達は思ってないよ。」
「正確には、迷惑をかけられたのは俺だけだから」
「悟には頭からかけとけばよかったよ」
優しい言葉に乗っかって、自分を指差してにっこり笑う五条に、なまえも遠慮せずににっこり笑い返す。
夏油と硝子の2人に、気にしていたことを吐き出させてもらって、彼女は心の中がスッと軽くなるのを感じた。