第5章 コラボ企画 鬼滅夢 『泡沫に蓮の華』
背中ごしに自分以外の体温を感じるのはいつぶりだろう。
怖くないという彼女のセリフは強がりだろう。
身に刻まれた恐怖はそう簡単に拭えるものではない。
「巌勝様。……もうお休みになられましたか?」
俺は目だけを瞑っていた。
彼女は体を動かしているようだ。
「綺麗な髪……」
動かない方が得策か?
彼女の指が俺の髪を撫でる。
「さらさら…」
女性と違って髪を褒められても……
と、内心思っていると、彼女がこちらに顔を近づけてきた。
「わっ、睫毛長い」
一体彼女は何を見ているのだ?
何故、睫毛……?
目を、開けてはいけないのだろうか?
灯籠の元で彼女に顔を眺められている。
どれくらいそうしていただろう。
彼女の視線に悪意はなく……
「…………いつまで、そうしているつもりだ?」
彼女の指が強ばる。
「俺の顔など眺めていても、面白くないだろう?」