第5章 コラボ企画 鬼滅夢 『泡沫に蓮の華』
「帰らないのか?」
「帰れないんです。私、田舎から奉公に出てきて、ご飯の支度が出来れば良いって。でも、さっき……」
成る程。
さっきの男は奉公先の主人か。
時に人は鬼よりも鬼たらしめる時がある。
「お侍様。後生です、今夜一晩だけお侍様のお屋敷にご厄介になってもよろしいですか?」
「………先ほど、男に対して嫌悪したのではないか?」
「………ですが、お侍様は…私を……」
「勘違いするな。俺は守った訳ではない……容易く他者に心を許すことは…」
娘は泣いていた。
ポロポロと大粒の涙を溢して。
「……私、家事くらいしか取り柄がなくて……子供を産んだ訳じゃないから、乳母にはなれないし……」
パサ。
娘の頭に羽織をかける。
「すまない、泣かせるつもりは……今日はもう日が暮れる。屋敷に来るか?」
「良いのですか?」
「先のような被害に合わないためにも今日の宿は提供しよう……」
少々無愛想だが、このお侍様は優しい方だ。