第5章 コラボ企画 鬼滅夢 『泡沫に蓮の華』
「捕まえたぁ……」
ガシッ。
「いや!お許し下さいませ!」
とうとう娘が男に押し倒された。
面倒なことに、俺の目の前で。
「旦那もどうです?ほら、よく見たら上玉でしょう?」
「いや!お侍様、お助け下さい!」
「失せろ……」
巌勝の一言に男は空寒さを覚えた。
何だ……?
ただの武家の者ではない。
巌勝のただならぬ気迫を感じて、男は娘を置いてきぼりにして逃げ出した。
娘はしばらく呆けていたが、乱れた着物を手繰り寄せて、巌勝に礼を述べた。
「ありがとうございます、お侍様……」
「礼など要らぬ……」
巌勝は娘に目もくれず、再び木刀を手に構えた。
娘はその場を動かなかった。
そのまま、巌勝が木刀を振るうのを止めるまで娘はそこにいた。